【2025年版】配信者のための防音対策完全ガイド｜賃貸でもできる騒音対策

配信中に「隣から苦情が来た」「家族に迷惑をかけている」という悩みを抱えていませんか？

特に賃貸住まいの配信者にとって、防音対策は配信活動を続けるための必須課題です。しかし、どこから手をつければいいのか、どのくらいの費用がかかるのか、分からないことだらけではないでしょうか。

この記事では、配信者目線で防音対策の基礎知識から具体的な製品選び、予算別の対策方法まで詳しく解説します。

なぜ配信者に防音対策が必要なのか

配信活動において防音対策が必要な理由は、大きく分けて3つあります。

1. 近隣トラブルの防止

配信者は一般的な生活パターンとは異なる時間帯に活動することが多いです。特に夜配信がメインの場合、22時以降の騒音は近隣住民にとって大きなストレスになります。

一度トラブルになると、配信活動自体を続けられなくなるリスクがあります。最悪の場合、退去を求められることもあるため、予防的な対策が重要です。

2. 配信音質の向上

防音対策、特に吸音対策は配信の音質を劇的に向上させます。部屋の反響が大きいと、マイクに入る音が濁り、リスナーにとって聞き取りにくい配信になってしまいます。

プロの配信者やVTuberの配信を聞くと、声がクリアで聞きやすいのは、適切な吸音処理がされているためです。

3. 集中できる環境の構築

外部からの騒音を遮断することで、配信に集中できる環境が作れます。特にASMRや歌配信では、外の車の音や隣室のテレビ音が致命的なノイズになります。

静かな環境を確保することで、クオリティの高いコンテンツ制作が可能になります。

防音の基礎知識｜吸音と遮音の違い

防音対策を始める前に、「吸音」と「遮音」の違いを理解しておくことが重要です。

吸音とは

吸音は、音のエネルギーを吸収して反響を減らすことです。部屋の中で声が響きすぎる、マイクにエコーが入るといった問題を解決します。

吸音材として使われるのは、ウレタンフォームやグラスウール、フェルトなどの多孔質素材です。これらは音波を内部で熱エネルギーに変換して吸収します。

遮音とは

遮音は、音を遮断して外に漏らさない・外から入れないことです。近隣への音漏れ防止や、外部の騒音をシャットアウトする効果があります。

遮音には質量のある素材（遮音シート、石膏ボード、コンクリートなど）が有効です。音を反射・遮断することで、透過を防ぎます。

配信者に必要なのは両方

建物構造と防音性能の関係

賃貸物件を選ぶ際、建物の構造によって防音性能が大きく異なります。

構造別の防音性能比較

構造	防音性能	特徴
木造	低い	壁が薄く、音が伝わりやすい。深夜配信には向かない
軽量鉄骨造	やや低い	木造よりマシだが、話し声は聞こえる可能性あり
重量鉄骨造	中程度	一定の遮音性があるが、大きな声は注意
RC造（鉄筋コンクリート）	高い	コンクリート壁で遮音性が高い
SRC造（鉄骨鉄筋コンクリート）	高い	RC造と同等の遮音性を持つ

配信者におすすめの物件選び

UR都市機構の情報によると、RC造・SRC造の建物は界壁（隣戸との間の壁）がコンクリートで作られているため、木造や軽量鉄骨造に比べて遮音性能が高くなっています。

防音対策の効果（実測データ）

防音対策を行った場合、どの程度の効果があるのでしょうか。専門業者による実測データを紹介します。

遮音材・吸音材の効果

Budscene社の実験データによると、各種防音材の組み合わせで以下のような遮音効果が得られています（500Hz帯域での測定）。

対策内容	遮音効果
遮音シート＋吸音パネル	約7dB
上記＋石膏ボード追加	約19dB
簡易ブース囲い（四方）	約28dB

防音カーテンの効果

防音カーテンは手軽な対策として人気ですが、効果は限定的です。ピアリビング社の解説によると、防音カーテンで得られる遮音効果は約3〜5dB程度とされています。

ただし、高周波の音（話し声の高い成分など）には比較的効果があり、窓からの音漏れを軽減する補助的な役割として有効です。

予算別おすすめ防音対策

予算5,000円〜1万円：入門編

デスク周りの吸音パネル設置

最も手軽な対策として、マイク周辺に吸音パネルを設置する方法があります。

• ウレタン吸音材：Amazonで6枚セット3,000円程度から
• フェルト吸音パネル：デザイン性が高く、インテリアとしても使える
• 設置方法：両面テープや画鋲で壁に取り付け（賃貸は剥がせるテープ推奨）

予算1万円〜3万円：リフレクションフィルター導入

マイク用リフレクションフィルター

マイク背面に設置して、反響音を抑える機材です。配信音質の向上に直接効果があります。

製品名	価格帯	特徴
KAOTICA EYEBALL	約2万円	マイクを球体で覆う独自構造。ボーカル収録で人気
sE Electronics RF-X	約1.5万円	コスパに優れた定番製品
Marantz Professional Sound Shield	約8,000円	エントリーモデルとして人気

リフレクションフィルターは吸音効果が主目的で、近隣への遮音効果はありません。ただし、マイクに入る反響音を減らすことで、配信音質は大幅に向上します。

予算3万円〜10万円：本格的な吸音・遮音対策

壁面への吸音パネル大量設置＋遮音シート

部屋全体の吸音性能を高めつつ、遮音シートで音漏れを軽減します。

• 吸音パネル：壁一面で2〜3万円程度
• 遮音シート：1巻5,000円〜1万円程度
• 施工：DIYで可能だが、重いので注意

ただし、本格的な遮音効果を得るには、遮音シートだけでは不十分です。石膏ボードを追加するなど、重量のある素材との組み合わせが必要になります。

予算15万円〜70万円：簡易防音室

配信者にとって最も効果的な対策が、簡易防音室の導入です。

簡易防音室の比較

主要製品の比較表

製品名	価格	サイズ	遮音性能	特徴
OTODASU II（DAISAKU）	148,000円〜	0.5畳〜	-25dB程度	コスパ重視。楽器練習用として人気
だんぼっち（VIBE Inc.）	約23万円〜	0.5畳〜	-30dB程度	ダンボール製で軽量。組み立て簡単
VERY-Q（宮地楽器）	約35万円〜	0.8畳〜	-30dB程度	楽器店が開発。拡張性が高い
YAMAHA アビテックス	約60万円〜	0.8畳〜	-35dB程度	高い遮音性能と耐久性

製品別の詳細解説

OTODASU II

価格帯が15万円前後からと、簡易防音室の中ではエントリーモデルに位置します。OTODASUシリーズは楽器練習用として開発されましたが、配信用途でも十分な性能を発揮します。

だんぼっち

ダンボール製の簡易防音室として知名度が高い製品です。「ニコニコ超会議」などで展示された実績もあり、配信者・歌い手の間で人気があります。

標準モデルで-30dB程度の遮音性能があり、追加の吸音材キットでさらに性能を高められます。

YAMAHA アビテックス

価格は高いですが、楽器メーカーならではの設計で高い遮音性能を実現しています。中古市場でも流通しており、予算を抑えたい場合は中古購入も選択肢になります。

簡易防音室の注意点

賃貸でもできる防音対策まとめ

賃貸物件でも、以下の対策は原状回復可能です。

原状回復可能な対策一覧

対策	設置方法	効果
吸音パネル	剥がせる両面テープ	反響軽減
防音カーテン	カーテンレール交換不要	窓からの音漏れ軽減
リフレクションフィルター	マイクスタンド設置	収録音質向上
デスク下マット	敷くだけ	振動軽減
簡易防音室	組み立て式	本格的な遮音

段階的な導入がおすすめ

いきなり高額な防音室を導入するのではなく、以下の順序で段階的に対策することをおすすめします。

1. まず試す：吸音パネル数枚（5,000円〜）
2. 音質改善：リフレクションフィルター（1万円〜）
3. 本格対策：壁面吸音材＋遮音シート（3万円〜）
4. 最終手段：簡易防音室（15万円〜）

配信スタイル別おすすめ対策

雑談配信メイン

話し声の音漏れが主な課題です。RC造以上の物件を選び、夜間は声のボリュームを意識的に抑えましょう。吸音パネルで反響を抑え、マイクの入力ゲインを上げて小声でも拾えるように調整します。

雑談配信では、長時間話し続けることが多いため、声のトーンを一定に保つ練習も有効です。また、単一指向性マイクを使い、正面から適切な距離で話すことで、小さな声でもクリアに収録できます。

おすすめ対策の優先順位：

1. 吸音パネル（デスク周り）
2. 単一指向性マイク
3. リフレクションフィルター
4. 必要に応じて簡易防音室

ゲーム実況メイン

興奮して大声になりがちなので、遮音対策が重要です。予算があれば簡易防音室の導入を強く推奨します。また、ヘッドホン使用で自分の声がモニターしにくくなり、無意識に声が大きくなることがあるので注意が必要です。

FPSやホラーゲームなど、リアクションが激しくなりやすいジャンルでは特に注意が必要です。配信前に「今日は声を抑える」と意識するだけでも効果があります。

おすすめ対策の優先順位：

1. 簡易防音室（最優先）
2. 遮音シート＋吸音パネル
3. ヘッドホンでの自分の声モニタリング
4. OBSのノイズゲート設定

歌配信・ASMR

音質への要求が高いため、リフレクションフィルターと吸音パネルの組み合わせが必須です。簡易防音室を導入する場合は、内部の反響にも注意して吸音材を追加設置しましょう。

ASMRでは特に、エアコンの音やPCファンの音も気になります。可能であればPCを別室に設置するか、ファンレスPCの導入も検討してください。

おすすめ対策の優先順位：

1. リフレクションフィルター（必須）
2. 部屋全体の吸音処理
3. 静音PC環境の構築
4. 簡易防音室（予算があれば）

コラボ配信・通話メイン

Discordなどでの通話配信が多い場合、相手の声が部屋に響かないようにする対策も必要です。スピーカーではなくヘッドホンを使用し、マイクに相手の声が入らないようにしましょう。

また、通話相手にもノイズ抑制を依頼することで、配信全体の音質が向上します。Discord標準のKrisp機能やNVIDIA Broadcastの利用を推奨してください。

ソフトウェアでの補助対策

防音対策と併せて、ソフトウェアでの対策も有効です。

ノイズ抑制ツール

• NVIDIA RTX Voice / Broadcast：RTXグラフィックボード搭載PCで使用可能。AIで環境音を除去
• Krisp：音声通話用のノイズキャンセリングソフト
• OBS標準機能：ノイズゲート、ノイズ抑制フィルター

これらは「配信に入る外部ノイズを減らす」ツールであり、「自分の声が外に漏れる」問題は解決できません。あくまで補助的な対策として活用しましょう。

防音対策のトラブルシューティング

対策したのに効果を感じない

原因1：音の回り込み 壁だけ対策しても、天井・床・ドアの隙間から音が漏れます。特にドア下の隙間は見落としがちです。隙間テープで対策しましょう。

原因2：固体伝播音 話し声は空気伝播音ですが、机を叩く音や足踏みは固体伝播音として建物を通じて伝わります。防振マットの設置が必要です。

原因3：周波数帯のミスマッチ 低音は対策が難しく、薄い吸音材では効果がありません。男性の声の低音成分や、ゲームの効果音（爆発音など）は漏れやすいです。厚めの吸音材や遮音シートの重ね貼りを検討してください。

夏場に防音室が暑すぎる

簡易防音室は密閉空間になるため、夏場は非常に暑くなります。

• 換気ファンの設置（多くの製品でオプション提供）
• USB扇風機の導入
• 配信時間を涼しい時間帯にずらす
• スポットクーラーの導入（高価だが効果的）
• 冷却マットやネッククーラーの使用

真夏は防音室内の温度が40度を超えることもあります。熱中症のリスクがあるため、温度計を設置して定期的に確認しましょう。

近隣からクレームが来た

まずは誠実に謝罪し、防音対策を行う旨を伝えましょう。配信時間帯の調整や、声のボリュームを意識的に抑えることも重要です。

対応のポイント：

1. すぐに謝罪（言い訳しない）
2. 具体的な対策を伝える
3. 連絡先を交換（何かあれば伝えてもらう）
4. 実際に対策を行い、改善を報告

根本的な解決には引っ越しも選択肢に入りますが、その場合はRC造・SRC造で角部屋・最上階を条件に探すことをおすすめします。

マイクに反響が入る

部屋の反響（リバーブ）がマイクに入ると、声が聞き取りにくくなります。

対策：

• マイクと口の距離を近づける（10〜15cm程度）
• リフレクションフィルターの導入
• 背面・側面に吸音パネルを設置
• 厚手のカーテンやラグで反響を減らす

OBSのノイズ抑制フィルターでは反響は消せません。物理的な吸音対策が必要です。

外部の騒音が配信に入る

車の音、工事音、隣人の生活音などが配信に入る場合の対策です。

短期的対策：

• NVIDIA BroadcastやRTX Voiceでノイズ除去
• 配信時間を騒音の少ない時間帯にずらす
• ノイズゲートの設定を調整

長期的対策：

• 窓の防音対策（二重窓、防音カーテン）
• 壁に遮音シートを追加
• 最終的には引っ越しを検討

DIYで防音対策をする際の注意点

低コストで防音対策を行いたい場合、DIYという選択肢もあります。しかし、いくつかの注意点があります。

賃貸物件での制限

賃貸物件では原状回復義務があるため、壁に穴を開けたり、接着剤を使ったりする施工は避ける必要があります。

賃貸でNGな施工：

• ネジや釘での壁への固定
• 強力接着剤の使用
• 壁紙の上からの塗装
• 窓枠への加工

賃貸でOKな施工：

• 剥がせる両面テープでの固定
• 突っ張り棒を使った設置
• 床に敷くだけの防振マット
• カーテンレールへの防音カーテン取り付け

防音材の選び方

ホームセンターやAmazonで購入できる防音材も増えていますが、品質にはばらつきがあります。

チェックポイント：

• 吸音材：厚さ25mm以上を推奨
• 遮音シート：面密度（kg/m²）が高いほど効果的
• 難燃性：火災リスクを考慮

安価な製品は効果が薄いこともあるため、レビューを確認してから購入しましょう。

安全面への配慮

DIYでは安全面にも注意が必要です。

• 重い素材を壁に貼る場合、落下のリスクがある
• 密閉空間を作る場合、換気を確保する
• 電気配線を塞がないようにする
• 火災報知器を塞がない

専門業者に依頼する場合

DIYでの対策に限界を感じたら、専門業者への依頼も検討しましょう。

防音工事の種類と費用相場

工事内容	費用相場	効果
壁の防音工事	10〜30万円/面	高い遮音性能
窓の二重サッシ化	5〜15万円/窓	外部騒音の大幅軽減
ドアの防音対策	5〜20万円	隙間からの音漏れ防止
本格的な防音室設置	100〜300万円	プロ仕様の遮音性能

業者選びのポイント

• 防音専門の業者を選ぶ（一般のリフォーム業者より専門性が高い）
• 見積もりは複数社から取る
• 施工実績を確認する
• 完成後の保証内容を確認する

賃貸物件の場合は、大家さんや管理会社の許可が必要です。退去時の原状回復についても事前に確認しておきましょう。

将来を見据えた配信環境計画

防音対策は一時的なものではなく、配信活動を長く続けるための投資です。

段階的な投資計画の例

第1段階（初期費用1万円以下）：

• 吸音パネル数枚の設置
• 配信時間帯の見直し
• マイク設定の最適化

第2段階（費用3〜5万円）：

• リフレクションフィルターの導入
• 壁面への吸音材追加
• 防音カーテンの設置

第3段階（費用15〜30万円）：

• 簡易防音室の購入
• または本格的な壁面防音対策

第4段階（将来的な検討）：

• 防音性能の高い物件への引っ越し
• 戸建て物件の検討
• 本格的な防音室の設置

収益化との関係

防音対策への投資は、配信活動の収益化にも関わります。

• 音質が良くなることでリスナーの満足度が上がる
• 配信可能な時間帯が増える
• 近隣トラブルを避けて安定した活動ができる
• 歌配信やASMRなど高単価なコンテンツに挑戦できる

初期投資と考えて、計画的に環境を整えていくことをおすすめします。

まとめ：配信者の防音対策チェックリスト

配信活動を長く続けるためには、防音対策は避けて通れません。以下のチェックリストを参考に、自分に合った対策を進めてください。

防音対策は一度に完璧を目指す必要はありません。予算と状況に合わせて段階的に対策を進め、快適な配信環境を構築していきましょう。

配信活動は長期戦です。今のうちから少しずつ環境を整えることで、将来的なトラブルを防ぎ、より良いコンテンツ制作に集中できるようになります。

---

参考文献・出典

本記事の作成にあたり、以下の情報を参考にしました。

• Budscene「遮音実験データ」 - 吸音材・遮音シートの効果測定値
• ピアリビング「防音の基礎知識」 - 吸音と遮音の解説、防音カーテンの効果
• UR都市機構「RC造の特徴」 - 建物構造と遮音性能の関係
• OTODASU公式サイト - OTODASU II製品仕様・価格
• だんぼっち公式サイト（VIBE Inc.） - だんぼっち製品仕様・価格
• 各メーカー公式サイト - リフレクションフィルター製品情報

※ 製品価格は2025年11月時点の情報です。最新の価格は各公式サイトでご確認ください。