
【歌ってみたの始め方②】機材選びと宅録の極意|スマホ録音を卒業しよう
本記事は全5回にわたる「歌ってみたバイブル」の第2回です。
前回は「準備と著作権」について解説しました。今回は、クオリティを決定づける「機材」と「録音」について深掘りします。
スマホ録音と「宅録」の決定的な違い
「iPhoneのマイクも性能いいし、それで良くない?」 確かに、メモ用としては優秀です。しかし、「歌ってみた」としてMIX(加工)することを前提とすると、スマホ録音は致命的な弱点があります。
- ノイズが多い:周囲の雑音や「サーッ」というホワイトノイズが入りやすい。
- 音が割れる:サビで声を張った瞬間に音が歪んでしまう。
- 編集耐性が低い:音の情報量が少ないため、EQやコンプをかけると音が劣化しやすい。
プロのような「キラキラしたボーカル」を作るには、オーディオインターフェースとコンデンサーマイクを使った「宅録環境」が必須です。
1. 失敗しない「三種の神器」選び
予算は無限ではありません。コスパ最強かつ、プロもサブ機として使うレベルの機材を紹介します。
① マイク:コンデンサーマイク一択
ダイナミックマイク(カラオケにあるような形)ではなく、感度の高いコンデンサーマイクを選びましょう。
- Audio-Technica AT2020(約1.2万円)
- ド定番。 癖のないクリアな音質で、MIX師からも「扱いやすい」と評判。迷ったらこれでOK。
- Audio-Technica AT4040(約3.5万円)
- 予算があるならこちら。空気感まで録れるプロユースの入り口。
② オーディオインターフェース:YAMAHAかMOTU
マイクの音をデジタル信号に変換してPCに送る箱です。
- YAMAHA AG03MK2(約1.8万円)
- 配信機能もついているので、歌枠(生配信)もやりたいならこれ一択。
- MOTU M2(約3万円)
- 音質特化。配信機能は弱いが、録音される音の太さとクリアさは同価格帯で最強。
③ ヘッドホン:SONY CD900ST
- SONY MDR-CD900ST(約1.8万円)
- 日本の全レコーディングスタジオにある「赤帯」。
- 「良い音で聴く」ためではなく、「ノイズやピッチのズレを見つける」ためのモニターヘッドホンです。
2. 「宅録」のクオリティを上げる環境づくり
高いマイクを買っても、部屋の環境が悪ければ意味がありません。 最大の敵は「部屋鳴り(反響音)」です。
お風呂場で歌うと響いて気持ちいいですが、録音においては最悪です。 MIX師は「響きのない乾いた音(デッドな音)」を求めます。後から綺麗なリバーブ(残響)をかけるためです。
今すぐできる反響対策
- クローゼットに向かって歌う: 服は最高の吸音材です。クローゼットを開け放ち、服に向かって歌うだけで、劇的に音がクリアになります。
- リフレクションフィルター: マイクの後ろに立てる吸音パネル。5,000円程度で買えます。
- カーテンを閉める: 窓ガラスは音を反射します。厚手のカーテンを閉めるだけでも効果があります。
[!TIP] 詳しくは別記事「【防音室なし】クローゼットでプロ級の録音をする方法」で解説しています。
3. プロ級に録るための「ゲインステージング」
機材を繋いだら、いよいよ録音です。ここで一番重要なのが「入力レベル(ゲイン)」の設定です。
黄金のルール:ピークで「-6dB」を目指せ
DAWのメーターを見てください。 一番声を張った(サビの最高音)ときに、メーターが赤く点灯(0dB)したら失敗(音割れ)です。 逆に、波形が小さすぎると、後で音量を上げた時にノイズも一緒に上がってしまいます。
「一番大きい声を出した時に、メーターが黄色(-6dB付近)になるくらい」につまみを調整してください。 これが、MIX師が最も作業しやすい適正レベルです。
ポップノイズを防ぐ
「パピプペポ」などの破裂音は、マイクに強い息が当たり「ボフッ」というノイズになります。 これを防ぐために、必ずポップガード(マイクの前の網)を使いましょう。 マイクと口の距離は、拳2つ分(約15〜20cm)空けるのが基本です。
4. 録音ソフト(DAW)は何を使う?
録音するだけなら、無料のソフトで十分です。
- Windows: Cakewalk by BandLab(完全無料なのにプロ機能搭載)
- Mac: GarageBand(最初から入っている。十分使える)
- 両対応: Studio One Prime(動作が軽くて使いやすい)
録音の手順
- DAWにオケ音源(インスト)を読み込む。
- 新しいトラック(Audio Track)を作る。
- マイクの入力設定を確認する。
- 録音ボタンを押して歌う。
- 何回も録る(テイクを重ねる)。
プロでも一発撮りはしません。Aメロだけ、サビだけ、と分けて録音してもOKです。 納得いくまで何回も録り直し、ベストなテイクを選びましょう。
第2回のまとめ
- 機材:コンデンサーマイクとオーディオインターフェースは必須投資。
- 環境:服やカーテンを活用して、響きのない「デッドな音」を目指す。
- 設定:ゲインはピークで-6dB。音割れは絶対NG。
良い音が録れましたか? しかし、録ったままの音(素音)は、まだCDのような音ではありません。 次回、「第3回:魔法の仕上げ『MIX』と依頼の作法」では、あなたの歌声をプロクオリティに磨き上げる「MIX」の世界と、MIX師への正しい依頼方法を解説します。
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