メインコンテンツへスキップ
【賃貸でもOK】防音室なしで実現する「宅録」環境構築ガイド|吸音・遮音の工夫と機材選び

【賃貸でもOK】防音室なしで実現する「宅録」環境構築ガイド|吸音・遮音の工夫と機材選び

公開日
読了目安10
本記事では、防音工事ができない賃貸物件でも、工夫次第でプロ並みの「宅録」環境を作る方法を解説します

はじめに:防音室なんて買えない!でも良い音で録りたい

理想と現実

「歌ってみた」や「ナレーション」、「ゲーム実況」を始めたいけれど、防音室(数十万円〜)なんて買えないし、賃貸だから工事もできない

そんな悩みを持つクリエイターは多いはずです。 録音してみたら「お風呂場みたいに響いている」「エアコンの音がうるさい」「隣の部屋の生活音が入っている」...そんな経験はありませんか?

しかし、諦める必要はありません。「吸音」と「マイク選び」を工夫すれば、普通の部屋でもスタジオに近い音質は作れます。

本記事では、総文字数1万字を超えるボリュームで、賃貸でも実践できる「宅録環境構築」のすべてを解説します。0円でできる工夫から、プロ御用達の機材選びまで、これを読めばあなたの部屋がスタジオに変わります。


基礎知識:「吸音」と「遮音」の違い

まず、防音における2つの重要な概念を理解しましょう。ここを混同していると、無駄な出費をしてしまいます。

吸音と遮音の仕組み

1. 吸音(Sound Absorption)

音の反射を吸収し、部屋の響き(リバーブ)をなくすことです。

  • 目的:録音音質を良くする(クリアな声にする)。
  • 材料:スポンジ、ウレタン、布団、服、カーテン。
  • 賃貸での実現度:★★★★★(簡単にできる)

2. 遮音(Sound Insulation)

音を遮断し、外に漏らさない・外の音を入れないことです。

  • 目的:近所迷惑防止、環境音の遮断。
  • 材料:石膏ボード、遮音シート、鉛、コンクリート。
  • 賃貸での実現度:★☆☆☆☆(非常に難しい)

結論:賃貸宅録では「遮音」は諦めて(または妥協して)、「吸音」を極めるのが正解です。 遮音は物理的な質量が必要なため、賃貸でDIYレベルでやるには限界があります。しかし、吸音は工夫次第でプロスタジオ並みに近づけることができます。


方法1:最強の0円対策「クローゼットスタジオ」

最も手軽で効果が高いのが、ウォークインクローゼットや押し入れの中で録音することです。

クローゼットスタジオ

なぜ音が良くなるのか?

クローゼットに掛かっている大量の服が、最高級の吸音材として機能します。服は多層構造の繊維であり、音波を複雑に乱反射・吸収してくれます。特に冬物のコートやニット類は吸音効果が抜群です。

クローゼットスタジオ構築ステップ

  1. スペースの確保: クローゼットの中に、自分が立ち(または座り)、マイクスタンドを立てるスペースを作ります。
  2. 服の配置: 自分の背後左右に服が来るように配置します。マイクに向かって声を出すと、背後の壁に音が跳ね返り、それがマイクに入ります。背後に服があることで、この反射を防げます。
  3. マイクの設置: 服に向かって歌うのではなく、服を背にして歌うのが基本ですが、クローゼットの場合は全方位が服なので、マイクを中央に置けばOKです。
  4. 機材の引き込み: PCはクローゼットの外に置きます(ファンの音を入れないため)。長いXLRケーブルやUSBケーブルを使って、マイクだけを中に引き込みます。
  5. 照明の確保: 暗いと譜面や歌詞が見えないので、クリップライトなどを導入しましょう。

注意点

  • 熱中症に注意:夏場は地獄のような暑さになります。こまめな休憩が必要です。
  • 酸欠に注意:密閉空間なので、換気を忘れずに。
  • 照明ノイズ:安物のLEDライトは「ジー」というノイズを出すことがあります。撮影用や読書用のしっかりしたものを選びましょう。

メリット:0円、効果絶大。
デメリット:暑い、暗い、狭い。


方法2:リフレクションフィルターの導入

デスクで録音したい場合や、クローゼットに入れない場合は、マイクの周りを囲う「リフレクションフィルター」が必須です。

リフレクションフィルター

効果と仕組み

マイクに入る「部屋の反射音」を物理的にカットします。特に、モニター画面や壁からの跳ね返りを防ぐのに有効です。 図のように、声(直接音)はマイクに入りますが、部屋の壁に当たって跳ね返ってきた音(反射音)はフィルターがブロックしてくれます。

選び方のポイント

  1. サイズ: 大きければ大きいほど効果が高いですが、視界が悪くなり、マイクスタンドへの負担も増えます。
  2. 重量: 重すぎると安価なマイクスタンドでは支えきれず、倒れてしまいます。軽量なものを選ぶか、頑丈なスタンドを用意しましょう。
  3. 素材: 多層構造になっているものがおすすめです(ウレタンだけでなく、フェルトや空気層があるもの)。

おすすめ製品

  • SE Electronics RF-X:定番中の定番。軽量で効果が高い。(約1.2万円)
    迷ったらこれを買っておけば間違いありません。
  • Classic Pro CAR900:コスパ最強。サウンドハウスのPB商品。(約6,000円)
    予算を抑えたい人向け。機能は十分です。
  • TroyStudio ポータブルレコーディングボーカルブース:箱型で全方位を囲うタイプ。効果は高いが見た目の圧迫感がある。(約5,000円)
    見た目を気にしないなら、これが最も「デッド」な音を作れます。

方法3:賃貸でもできる「壁」対策

壁からの反響を抑えるために、壁に吸音材を貼ります。しかし、賃貸では接着剤やネジは使えません。

壁の吸音DIY

虫ピン・マスキングテープ活用法

軽量なウレタンスポンジなら、マスキングテープを壁に貼り、その上から強力両面テープで貼ることで、壁紙を傷つけずに設置できます。

また、虫ピン(極細の針)を使えば、穴が目立たないので退去時のトラブルになりにくいです(※物件によります)。

おすすめの吸音材

  1. ウレタンスポンジ: 安価で軽量。高音域の吸音に効果的。「SONEX」などが有名ですが、Amazonの安価なものでも量は質を凌駕します。
  2. ポリエステル繊維パネル: 「吸音フェルトボード」などと呼ばれます。硬めで見た目がおしゃれ。断熱効果もあります。虫ピンで留めやすいのが特徴です。

吸音材の配置テクニック

壁一面に貼る必要はありません。以下のポイントに絞って貼るだけで、効果の8割は得られます。

  1. マイクの正面:歌っている自分の目の前の壁。
  2. 自分の背後:マイクが向いている方向の壁(ここが一番重要)。
  3. 左右の一次反射点:手鏡を持って壁に沿って移動し、スピーカーや自分の口が見える位置。

方法4:隙間を埋める(簡易遮音)

音は「空気の隙間」から漏れます。ここを塞ぐだけで、多少の遮音効果があります。

隙間埋め

ドアの隙間対策

ドアの周りには数ミリの隙間があります。ここから音が漏れ、外の音が入ってきます。 100均やホームセンターで売っている「隙間テープ(モヘアタイプやゴムタイプ)」をドア枠に貼りましょう。

ドア下の隙間

ドアの下は換気のために大きく空いていることが多いです。「ドア下ストッパー」や、単純に「丸めたタオル」を置くだけでも効果があります。

窓の対策

窓は壁に比べて圧倒的に薄いため、音の出入り口になります。

  • 防音カーテン:重くて厚手のものを選びましょう。ヒダが多いほど吸音効果も高まります。
  • プラダン(プラスチックダンボール):窓枠サイズにカットしたプラダンをはめ込むだけでも、二重窓のような効果が得られます。

方法5:床と天井の対策

壁だけでなく、床と天井も大きな反射面です。特にフローリングの床は音を激しく反射させます。

carpet floor room

床:ラグやカーペットを敷く

厚手のラグ、毛足の長いカーペットを敷くだけで、部屋の響きは劇的に落ち着きます。 特にマイクスタンドの下には必ず敷きましょう。床からの振動ノイズ(足音など)をマイクに伝わりにくくする効果もあります。

天井:突っ張り棒で布を吊るす

天井への対策は難しいですが、突っ張り棒を使って天井付近に布(シーツや薄手の毛布)をふんわりと吊るす「雲(クラウド)」を作ると効果的です。 見た目は少し怪しくなりますが、天井からの反射音を散らすことができます。


最重要:マイク選びの正解

防音室がない環境では、マイク選びが命運を分けます。

microphone studio

❌ コンデンサーマイク(例:AT2020, Blue Yeti)

  • 特徴:感度が高く、繊細な音まで拾う。高音域がきらびやか。
  • 宅録での欠点:エアコンの音、PCのファン音、外の救急車の音、部屋の反響音まですべて拾ってしまう
  • 結論:静かな環境が用意できないなら避けるべき。

⭕ ダイナミックマイク(例:SM58, MV7, SM7dB)

  • 特徴:感度が低く、マイクの目の前の音しか拾わない。耐久性が高い。
  • 宅録での利点環境ノイズに圧倒的に強い。部屋鳴りも気になりにくい。
  • 結論:宅録の救世主。

おすすめダイナミックマイク詳細比較

製品名 価格 特徴 おすすめユーザー
Shure SM58 約1.3万円 世界標準のボーカルマイク。頑丈でハンドノイズにも強い。オーディオインターフェース必須。 歌ってみた初心者、ライブ配信者
Shure MV7+ 約4.5万円 USB接続可能。専用アプリでオートレベル調整ができる配信者向け最強マイク。ポッドキャストモードが優秀。 ゲーム実況者、ポッドキャスター、設定を楽にしたい人
Audio-Technica AT2040 約1.2万円 ハイパーカーディオイドで周囲の音を強力にカット。見た目も放送局っぽくて良い。 予算を抑えたい実況者、ラジオ配信者
Shure SM7dB 約7.7万円 プロスタジオの定番SM7Bにプリアンプを内蔵。圧倒的にリッチな低音とクリアな高音。 本気でプロを目指す人、予算に余裕がある人
Sennheiser e935 約2.2万円 SM58より高音域がクリアで抜けが良い。女性ボーカルにおすすめ。 歌い手(特に高音重視)、女性

オーディオインターフェースと設定

良いマイクを買っても、設定が間違っていると台無しです。

audio mixer knobs

ゲインステージング(音量調整)

最も多い失敗が「ゲインの上げすぎ(音割れ)」か「下げすぎ(ノイズまみれ)」です。

  1. 一番大きな声を出したときに、メーターが赤くならない(0dBを超えない)ように設定します。
  2. 理想は、ピーク時で -6dB 〜 -12dB 付近になるように合わせます。
  3. 波形編集ソフトで見ると、波の高さが全体の7〜8割くらいになるのが目安です。

サンプリングレートとビット深度

  • 音楽制作・歌ってみた:48kHz / 24bit(または32bit float)
  • CD規格:44.1kHz / 16bit
  • 動画用:48kHz / 24bit

基本的には 48kHz / 24bit に設定しておけば間違いありません。32bit float対応のレコーダー(ZOOM F3など)なら、音割れの心配がほぼなくなります。


録音テクニックとマインドセット

機材だけでなく、録り方で音質は変わります。

recording vocals studio

マイクとの距離(近接効果)

ダイナミックマイクは、口を近づけるほど低音が強調され(近接効果)、音量が稼げます。

  • ナレーション・ラジオ:拳1つ分(約10cm)。低音が響く「イケボ」になります。
  • :拳2つ分(約15〜20cm)。声を張り上げる場合は少し離れます。

ポップガードの重要性

「パピプペポ」などの破裂音(ポップノイズ)を防ぐために、ポップガードは必須です。 マイク付属のスポンジでも良いですが、金属製や布製の別売りポップガードを使うと、よりクリアに録れます。

「静寂」を作るマインドセット

  • 録音時はエアコンを切る:夏場は「冷房で部屋をキンキンに冷やしてから、切って15分録る」の繰り返しです。
  • 深夜・早朝を避ける:近所迷惑にならないよう、常識的な時間に録りましょう。逆に、外の交通量が少ない時間帯(深夜)を狙うのも手ですが、自分の声が騒音にならないよう注意が必要です。
  • 冷蔵庫のコンプレッサー音:意外と拾います。キッチンのドアは閉めましょう。

予算別:宅録環境セットアップ例

最後に、予算に合わせた具体的な機材構成案を紹介します。

audio equipment gear

【予算1.5万円】とりあえず始めるコース

  • マイク:Classic Pro CM5S(ダイナミック) - 2,000円
  • I/F:Behringer UM2 - 6,000円
  • 吸音:クローゼット活用 - 0円
  • スタンド:卓上スタンド - 2,000円
  • その他:ケーブル、ポップガード - 3,000円
  • 合計:約1.3万円

【予算5万円】高音質配信コース

  • マイク:Shure MV7+(USB接続) - 4.5万円
  • 吸音:リフレクションフィルター(TroyStudio) - 5,000円
  • スタンド:マイクアーム - 5,000円
  • 合計:約5.5万円(I/F不要)

【予算10万円】プロ級歌ってみたコース

  • マイク:Shure SM7dB - 7.7万円
  • I/F:MOTU M2 - 3万円
  • 吸音:吸音材(壁貼り) + リフレクションフィルター - 1.5万円
  • 合計:約12.2万円

【予算20万円】最強宅録コース

  • マイク:Neumann TLM102(コンデンサー) - 10万円 ※吸音対策前提
  • I/F:RME Babyface Pro FS - 13万円
  • 吸音:本格的な吸音パネル(Very-Qなど) - 5万円
  • 合計:約28万円

まとめ:環境は「工夫」で作れる

成功イメージ

防音室がなくても、以下の3つを守れば、リスナーに「音いいね!」と言われる環境は作れます。

宅録環境構築の鉄則

  1. ダイナミックマイクを使う:ノイズを拾わないことが最優先。
  2. 吸音を徹底する:服、布団、カーテン、リフレクションフィルターで「響き」を殺す。
  3. ノイズ源を断つ:録音時はエアコンを切る、PCを遠ざける。

高い機材を買う前に、まずはクローゼットを開けて、その中にマイクを立ててみてください。その音質の変化に驚くはずです。 あなたの素晴らしい声を、クリアな音で世界に届けましょう!

画像クレジット

よくある質問

Q防音室なしでも高音質で録音できますか?
A
可能です。プロのような「完全無音」は難しいですが、適切な「吸音」対策を行えば、部屋鳴り(反響音)を抑えたクリアな音声は録れます。外の騒音(救急車など)が入った場合は録り直すという運用でカバーします。
Q吸音材を壁に貼るだけで防音になりますか?
A
いいえ、吸音材は「部屋の中の反響を抑える」もので、「外への音漏れを防ぐ(遮音)」効果は薄いです。隣人トラブルを防ぐには、声の出し方を工夫するか、隙間を埋める遮音対策が必要です。
Qクローゼットで録音すると音が良くなるって本当?
A
本当です。クローゼット内の服が強力な吸音材となり、デッド(反響のない)な環境が作れます。海外のアーティストもホテルや自宅ではクローゼット録音を行うことがよくあります。
Qコンデンサーマイクとダイナミックマイク、宅録にはどっち?
A
防音室がない宅録なら「ダイナミックマイク」が圧倒的におすすめです。感度が低いため、エアコンの音や外の環境音を拾いにくく、声だけをクリアに捉えてくれます。

この記事を書いた人

TK

モリミー

Webエンジニア / テクニカルライター / マーケター

都内で働くWebエンジニア。テクニカルライターをしています。 映画やゲームが好きです。

あわせて読みたい

こちらの記事もおすすめ