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【2025年版】配信者のための法人化ガイド|個人事業主vs法人のメリット比較

【2025年版】配信者のための法人化ガイド|個人事業主vs法人のメリット比較

公開日
読了目安15

配信収入が増えたら考える「法人化」

【結論】法人化を検討すべきタイミングと判断基準

「そろそろ法人化した方がいいのかな?」
その判断、数字で見れば答えは明確です。

  • 判断基準:年間所得800万円〜1,000万円が目安
  • 税金メリット:所得税最大45% → 法人税約23%
  • 社会保険:将来の年金受給額が増える
  • 信用度:法人契約、企業案件で有利
  • デメリット:設立・維持コスト、事務負担増

「配信の収益が増えてきたけど、法人化って必要?」 「個人事業主と法人、どっちがお得なの?」 「税金が高すぎて手取りが少ない...」 「そもそも法人化って何をすればいいの?」

配信収入が安定してくると、多くの配信者が「法人化」という選択肢に直面します。

しかし、法人化は必ずしも正解ではありません。所得規模や将来のビジョンによって、個人事業主のままの方が有利な場合もあります。

本記事では、配信者のための法人化を徹底解説します。個人事業主と法人の違いから、具体的な判断基準、設立手続きまで、10,000字以上のボリュームでお届けします。

注意:本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の判断については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。


個人事業主と法人の違い

基本的な違い

項目 個人事業主 法人(株式会社・合同会社)
設立手続き 開業届のみ(無料) 登記が必要(10〜30万円)
税金の種類 所得税(累進課税) 法人税(比例税率)
最高税率 所得税45%+住民税10%=55% 法人税約23%+役員報酬の所得税
社会保険 国民健康保険・国民年金 健康保険・厚生年金(強制加入)
決算・申告 確定申告(年1回) 決算・法人税申告(年1回)
赤字の場合 税金なし(住民税の均等割のみ) 法人住民税均等割7万円必須
信用度 普通 高い
経費の範囲 やや制限あり 広い
事務負担 比較的軽い 重い

法人の種類:株式会社 vs 合同会社

配信者が法人化する場合、多くは「株式会社」か「合同会社」を選びます。

項目 株式会社 合同会社
設立費用 約25〜30万円 約10〜15万円
認知度 高い やや低い
代表者の呼称 代表取締役 代表社員
決算公告 必要(年間約6万円) 不要
役員任期 最長10年(登記変更必要) 無期限
資金調達 株式発行で調達可能 出資者からの出資のみ
おすすめの人 将来的に大規模化を目指す 一人または小規模で運営
配信者におすすめは?
  • 合同会社がおすすめ:一人または小規模運営なら合同会社が費用対効果高い
  • 理由:設立費用が安い、決算公告不要、税務上のメリットは株式会社と同じ
  • デメリット:認知度がやや低い(ただし最近は増加中)

Apple Japan、Amazon Japan、Google合同会社など、大手企業も合同会社形態を採用しています。


税金面でのメリット・デメリット比較

所得税 vs 法人税の税率比較

課税所得 個人(所得税+住民税) 法人税率 有利なのは?
195万円以下 15%(5%+10%) 約23% 個人
195万円超〜330万円 20%(10%+10%) 約23% 個人
330万円超〜695万円 30%(20%+10%) 約23% 法人
695万円超〜900万円 33%(23%+10%) 約23% 法人
900万円超〜1,800万円 43%(33%+10%) 約23% 法人
1,800万円超〜4,000万円 50%(40%+10%) 約23% 法人
4,000万円超 55%(45%+10%) 約23% 法人
税率だけでは判断できない

法人化すると、自分に支払う「役員報酬」に対して所得税がかかります。

  • 法人の利益 → 法人税約23%
  • 役員報酬 → 所得税(累進課税)
  • ポイント:役員報酬と法人利益のバランスで節税

具体例:所得800万円の場合の税負担比較

【個人事業主の場合】

所得:800万円
所得税:800万円 × 23% − 控除63.6万円 = 約120.4万円
住民税:800万円 × 10% = 80万円
事業税:(800万円 − 290万円) × 5% = 25.5万円
国民健康保険:約80万円(自治体により変動)
国民年金:約20万円

合計税・社会保険料:約326万円
手取り:約474万円

【法人化の場合(役員報酬600万円、法人利益200万円)】

【個人側】
役員報酬:600万円
給与所得控除:164万円
課税所得:436万円
所得税:約28万円
住民税:約43.6万円
健康保険・厚生年金:約90万円(会社負担分も実質自己負担)

【法人側】
法人利益:200万円
法人税等:約46万円(23%)

合計税・社会保険料:約207.6万円
手取り:約546.4万円(役員報酬手取り+法人内部留保)

差額:約72万円の節税
法人化のメリット(税金面)
  • 所得800万円以上で税率面で有利になる
  • 役員報酬の給与所得控除(最大195万円)が使える
  • 退職金を損金計上できる(将来の節税)
  • 家族への給与を経費にできる(個人事業主の青色事業専従者給与より柔軟)
  • 社宅制度で家賃を経費化
  • 生命保険の法人契約で節税
法人化のデメリット(税金面)
  • 赤字でも法人住民税均等割(年7万円〜)が必須
  • 税理士費用が個人より高い(年20〜50万円)
  • 設立時の登記費用(10〜30万円)
  • 事務作業の増加(経理、社会保険手続き等)

社会保険の違い

個人事業主の社会保険

個人事業主の社会保険
  • 国民健康保険:所得に応じて保険料が増加(上限あり)
  • 国民年金:定額(月16,520円 / 2025年度)
  • メリット:所得が低いと保険料も低い
  • デメリット:将来の年金受給額が少ない(基礎年金のみ)

法人の社会保険

法人の社会保険
  • 健康保険:標準報酬月額の約10%(会社と折半)
  • 厚生年金:標準報酬月額の約18.3%(会社と折半)
  • 強制加入:一人社長でも加入義務あり
  • メリット:将来の年金受給額が増える(基礎年金+厚生年金)
  • デメリット:保険料負担が大きい

社会保険料の比較例(月収50万円の場合)

項目 個人事業主 法人(一人社長)
健康保険 国保 約6.5万円/月 健保 約5万円/月(労使折半後)
年金 国民年金 約1.7万円/月 厚生年金 約4.6万円/月(労使折半後)
合計 約8.2万円/月 約9.6万円/月
将来の年金 基礎年金のみ(約6.5万円/月) 基礎年金+厚生年金(約14万円/月)
社会保険のポイント
  • 法人化すると月の保険料は増えるが、将来の年金が2倍以上になる
  • 健康保険の傷病手当金、出産手当金など、国保にはない給付がある
  • 一人社長でも実質的には会社負担分も自分が払う

経費の違い

個人事業主の経費

個人事業主で認められる経費
  • 配信機材(PC、マイク、カメラ等)
  • ゲームソフト、サブスク代
  • インターネット回線費(按分)
  • 電気代(按分)
  • 家賃(按分、事業専用部分のみ)
  • 青色事業専従者給与(配偶者等への給与)

法人の経費

法人で追加で認められる経費
  • 役員報酬:自分への給与を経費化
  • 社宅制度:家賃の50%〜90%を経費化(一定の条件あり)
  • 出張手当:日当を経費化
  • 生命保険:法人契約で一部経費化
  • 退職金:将来の退職金を積み立て(損金算入)
  • 家族への給与:制限なく支払える(個人より柔軟)

社宅制度の節税効果

法人化の大きなメリットの一つが「社宅制度」です。

社宅制度とは
  • 会社が賃貸契約を結び、役員に貸与
  • 役員は賃料相当額(実際の家賃の10〜50%程度)を会社に支払う
  • 会社は差額を経費計上できる

:家賃20万円の場合、役員負担5万円、会社負担15万円を経費化


法人化のタイミング判断基準

所得金額で判断

年間所得 判断 理由
〜500万円 個人事業主でOK 法人化のメリットが小さい
500〜800万円 検討開始 税率面でボーダーライン
800〜1,000万円 法人化推奨 税率メリット大きい
1,000万円超 法人化必須 消費税対策も含め有利

その他の判断基準

所得以外の法人化検討ポイント
  • 企業案件の増加:法人契約を求められるケースが増える
  • 事務所の賃貸:個人名義より法人名義の方が契約しやすい
  • スタッフ雇用:編集者やマネージャーを雇う予定がある
  • 信用度向上:取引先や金融機関の信用が上がる
  • 消費税:売上1,000万円超で課税事業者になる前に法人化(2年間免税)

法人設立の具体的な手順

1. 法人設立前の準備

設立前に決めること
  1. 会社名(商号):既存の会社と重複しないか確認
  2. 事業目的:配信、動画制作、コンテンツ制作など
  3. 本店所在地:自宅でも可
  4. 資本金:1円から可能(実務上は10万円〜100万円)
  5. 決算月:繁忙期を避ける、節税の観点で選ぶ
  6. 株式会社 or 合同会社の選択

2. 定款の作成

定款とは

会社の基本的なルールを定めた文書です。

  • 記載事項:会社名、本店所在地、事業目的、資本金など
  • 株式会社:公証人の認証が必要(手数料約5万円)
  • 合同会社:認証不要

3. 資本金の払込

設立時に決めた資本金を、発起人(設立者)の個人口座に振り込みます。

4. 法務局で登記申請

登記に必要な書類
  • 定款
  • 登記申請書
  • 資本金の払込証明書
  • 役員の就任承諾書
  • 印鑑証明書
  • 印鑑届出書

登録免許税:株式会社15万円、合同会社6万円

登記申請から約1〜2週間で登記完了。

5. 設立後の手続き

設立後に必要な手続き
  • 税務署:法人設立届出書、青色申告承認申請書、給与支払事務所開設届
  • 都道府県税事務所:法人設立届出書
  • 市区町村:法人設立届出書
  • 年金事務所:社会保険新規適用届(5日以内)
  • 労働基準監督署:従業員雇用時のみ
  • ハローワーク:従業員雇用時のみ
  • 法人口座開設:銀行で法人口座を開設

設立費用の総額

項目 株式会社 合同会社
定款認証手数料 約5万円 不要
定款印紙代 4万円(電子定款なら不要) 4万円(電子定款なら不要)
登録免許税 15万円 6万円
印鑑作成 約1〜3万円 約1〜3万円
司法書士報酬(依頼時) 5〜10万円 5〜10万円
合計 約25〜30万円 約10〜15万円

法人化後の運営

役員報酬の決め方

役員報酬のルール
  • 定期同額給与:毎月同額である必要がある
  • 決算後3ヶ月以内に決定し、変更は原則1年間不可
  • 議事録:役員報酬の決定は株主総会(または社員総会)で決議

役員報酬の決め方のコツ

節税のための役員報酬設定
  • 法人利益を少なくしすぎると、法人税の優遇措置(軽減税率)が使えない
  • 役員報酬を高くしすぎると、所得税・住民税が高くなる
  • バランス:役員報酬600万円〜800万円、法人利益200万円〜400万円程度が一般的

決算・申告

法人の決算・申告
  • 決算:事業年度終了後2ヶ月以内
  • 申告:法人税、地方法人税、消費税(課税事業者の場合)
  • 税理士依頼:実務上、ほぼ必須(年20〜50万円)

法人維持費用

項目 年間費用
税理士報酬 20〜50万円
法人住民税均等割 7万円
決算公告(株式会社のみ) 約6万円
社会保険料 役員報酬による
会計ソフト 2〜5万円
合計 約30〜70万円

法人化のメリット・デメリット総まとめ

メリット

法人化のメリット
  • 節税効果:所得800万円以上で税率面で有利
  • 給与所得控除:最大195万円の控除
  • 社会保険:将来の年金受給額が増える
  • 信用度:企業案件、法人契約で有利
  • 経費の範囲:社宅、出張手当、生命保険など幅広い
  • 赤字繰越:最大10年間(個人は3年)
  • 退職金:退職金を損金計上できる
  • 消費税:設立後2年間免税(条件あり)
  • 事業承継:株式の譲渡で引き継ぎ可能

デメリット

法人化のデメリット
  • 設立費用:10〜30万円
  • 維持費用:税理士、均等割で年30〜70万円
  • 赤字でも税金:法人住民税均等割7万円必須
  • 社会保険強制加入:保険料負担が増える
  • 事務負担:決算、社会保険手続き等が複雑
  • 廃業の手間:解散・清算登記が必要(費用もかかる)
  • 交際費の制限:年間800万円まで(個人は制限なし)

よくある質問

Q: 個人事業主から法人化する時の手続きは?

A: 個人事業を廃業し、法人で新たに事業を開始
  • 個人事業の廃業届を税務署に提出
  • 法人を設立し、法人で事業を引き継ぐ
  • 個人名義の契約(銀行口座、賃貸、各種サービス)を法人名義に変更
  • YouTube等の収益振込先を法人口座に変更

Q: 一人で法人化しても大丈夫?

A: 問題ありません

多くの配信者やYouTuberが一人会社を設立しています。

  • 合同会社なら代表社員1名でOK
  • 株式会社も取締役1名から設立可能
  • 実務上の経理や手続きは税理士に依頼すれば問題なし

Q: 法人化すると会社にバレる?

A: 住民税の変化でバレる可能性あり
  • 法人から自分に役員報酬を払うと、会社の給与と合算されて住民税が増える
  • 住民税を「普通徴収」にすれば、配信収入分は自分で納付(ただし自治体による)
  • 法人の登記は公開情報なので、検索されるとバレる

Q: 法人化したけど赤字になったら?

A: 法人住民税均等割は必ず納付
  • 赤字でも法人住民税均等割(年7万円)は納付義務あり
  • 赤字は最大10年間繰越可能(翌年以降の黒字と相殺)
  • 個人事業主は赤字なら税金なし(住民税の均等割のみ)

まとめ:法人化は「数字」で判断

この記事のまとめ

  • ✅ 年間所得800万円〜1,000万円が法人化の目安
  • ✅ 法人化で税率約23%(個人の累進課税より有利)
  • ✅ 社会保険料は増えるが、将来の年金も増える
  • ✅ 合同会社なら設立費用10〜15万円
  • ✅ 維持費用(税理士、均等割)は年30〜70万円
  • ✅ 企業案件や信用度で有利になる
  • ✅ 所得500万円以下なら個人事業主でOK

法人化は「なんとなく」で決めるものではありません。具体的な数字をもとに判断することが重要です。

所得が800万円を超えてきたら、一度税理士に相談して、シミュレーションしてもらうことをおすすめします。

自分の配信ビジネスの規模や将来のビジョンに合わせて、最適な選択をしましょう。

法人化の相談は税理士へ

個別の状況に応じた最適な判断は、税理士等の専門家にご相談ください。

この記事は一般的な情報提供です。個別の判断は専門家にご相談ください。


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※ 本記事は2025年11月時点の情報に基づいています。税制は変更される可能性がありますので、最新情報は国税庁や税理士にご確認ください。

よくある質問

Q配信者はいつ法人化すべき?
A
一般的な目安は年間所得800万円〜1,000万円を超えた時点です。所得税の累進課税率が23%→33%に上がるタイミングで、法人税率(約23%)の方が有利になります。ただし、社会保険料や事務負担も考慮する必要があります。
Q法人化の初期費用はいくら?
A
合同会社なら約10〜15万円、株式会社なら約25〜30万円が目安です。内訳は定款認証代、登録免許税、印鑑作成費など。司法書士に依頼する場合は別途5〜10万円程度かかります。
Q個人事業主のままでもいい?
A
所得が年間800万円以下なら個人事業主で問題ありません。手続きが簡単で、事務負担も少ないメリットがあります。ただし、法人化することで得られる信用度や節税メリットも検討価値があります。
Q法人化すると社会保険はどうなる?
A
個人事業主の国民健康保険・国民年金から、会社の健康保険・厚生年金に切り替わります。保険料は会社と個人で折半(実質的には両方自己負担)しますが、将来の年金受給額が増えるメリットがあります。
Q一人社長でも法人化できる?
A
はい、可能です。多くの配信者は「一人会社」として法人化しています。合同会社なら代表社員1名から設立でき、株式会社でも取締役1名から設立できます。

この記事を書いた人

TK

モリミー

Webエンジニア / テクニカルライター / マーケター

都内で働くWebエンジニア。テクニカルライターをしています。 映画やゲームが好きです。

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