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【中国ライブコマース最前線】配信で稼ぐ中国式マネタイズ戦略|日本での活用法

【中国ライブコマース最前線】配信で稼ぐ中国式マネタイズ戦略|日本での活用法

公開日
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「配信で商品を売る」——中国では当たり前のこのスタイルが、日本でもついに本格化しようとしています。

中国のライブコマース市場は約100兆円規模。日本の小売市場全体に匹敵するほどの巨大市場が、たった数年で形成されました。そして今、この波が日本にも押し寄せています。

なぜ中国ではこれほどライブコマースが発展したのでしょうか?そして、日本の配信者はこのトレンドをどう活かせるのでしょうか?

中国では「直播带货(ライブ配信で商品を売る)」という言葉が一般化し、トップKOL(インフルエンサー)は芸能人以上の影響力を持つようになりました。その成功モデルを研究することで、日本でのライブコマース戦略に活かすことができます。

この記事では、中国ライブコマースの最新動向日本の配信者が活用できるマネタイズ戦略を解説します。

この記事でわかること

  • 中国ライブコマース市場の現状と規模
  • 主要プラットフォーム(淘宝・抖音・快手)の特徴
  • 中国式マネタイズの仕組み
  • 日本でライブコマースを始める方法
  • 成功事例と収益化のポイント

中国ライブコマース市場の衝撃的な規模

市場規模の推移

市場規模(人民元)日本円換算
2017年196億元約400億円
2020年1兆元約17兆円
2023年4.9兆元約98兆円
2025年(予測)6兆元約100兆円超

わずか6年で250倍という驚異的な成長を遂げています。

この規模を日本と比較すると、日本のEC市場全体(約20兆円)の5倍以上。ライブコマースだけで日本のEC市場全体を大きく上回る規模に成長しているのです。

中国でライブコマースが爆発的に成長した背景

なぜここまで成長したのか?

中国では「ライブ配信+EC+決済」がスマホ1台で完結する環境が早期に整備されました。視聴者はライブを見ながらワンタップで購入でき、決済もAlipay/WeChatPayで即座に完了します。

成長を後押しした要因は以下の通りです:

  1. モバイル決済の普及:QRコード決済が日常化し、購入のハードルが極めて低い
  2. 物流インフラの発達:注文から1〜2日で届く配送網が全土に整備
  3. コロナ禍の影響:外出制限で実店舗が閉鎖され、オンライン購買が加速
  4. 若年層のエンタメ消費:「買い物」ではなく「推しの配信を見る感覚」で購入
  5. 農村部へのリーチ:都市部から離れた地域にも商品が届くようになった

特に重要なのは、「購入体験がエンターテインメント化している」という点。日本のテレビショッピングを、よりインタラクティブに、よりエンタメ性高くしたものと考えるとわかりやすいでしょう。


中国主要ライブコマースプラットフォーム

プラットフォーム別シェア(2024年)

プラットフォームシェア特徴
抖音(Douyin)47%TikTokの中国版。若年層中心、エンタメ性重視
快手(Kuaishou)27%地方都市に強い、親近感重視
淘宝直播(Taobao Live)23%EC大手アリババ運営、購買目的ユーザーが多い

淘宝直播(タオバオライブ)

アリババが運営するECプラットフォーム「淘宝」のライブ機能。

2016年にサービス開始し、中国ライブコマースの先駆けとなりました。「買い物をするためにアプリを開く」ユーザーが多いため、購買転換率が高いのが特徴です。

淘宝直播の強み

  • 購買目的のユーザーが多く、売上直結
  • 商品検索→ライブ視聴→購入の流れがスムーズ
  • 大手ブランドの公式配信も多数
  • 返品・返金システムが整備されており、購入者が安心

抖音(Douyin / 中国版TikTok)

バイトダンス社が運営するショート動画プラットフォーム。

2020年以降、EC機能を強化し、淘宝に迫る勢いで成長しています。ショート動画で商品の魅力を伝え、そのままライブ配信に誘導するという独自の流れが確立されています。

2023年にはライブコマース取扱高が2兆元(約40兆円)を突破し、淘宝直播を抜いてトップシェアを獲得しました。

抖音の強み

  • 圧倒的なユーザー数(中国国内6億人以上)
  • アルゴリズムによる拡散力
  • 若年層への訴求力
  • 認知拡大に最適
  • ショート動画→ライブの導線が強い

抖音の課題

  • 動画視聴目的のユーザーが多く、購買転換率はやや低め
  • エンタメ性と商品紹介のバランスが必要
  • 競争が激しく、新規参入のハードルが高い

快手(Kuaishou)

中国の地方都市や農村部で強い支持を得ているプラットフォーム。

「老铁(ラオティエ)」と呼ばれる親しみのある関係性を重視しており、抖音とは異なる文化を持っています。都市部のおしゃれなインフルエンサーより、地方出身の「身近な存在」が好まれる傾向にあります。

月間アクティブユーザー数は約4億人。リピート購入率が高く、一度ファンになると長期的な顧客になりやすいのが特徴です。

快手の強み

  • 配信者と視聴者の距離が近い
  • コミュニティ感が強い
  • リピーター獲得に有効
  • 地方・農村部へのリーチに強い
  • 農産物や地場産品の販売に向いている

中国式マネタイズの仕組み

KOL(Key Opinion Leader)の役割

中国のライブコマースではKOL(インフルエンサー)が中心的な役割を果たします。

KOLは単なる「商品紹介者」ではなく、商品の価値を伝えるエンターテイナーであり、視聴者に代わって商品を厳選するキュレーターでもあります。

中国のKOLは、企業から商品を受け取る際に厳しい条件交渉を行います。「この価格でなければ紹介しない」「このクオリティでなければNG」といった姿勢で、視聴者の信頼を維持しています。

KOLの収益構造

  • 固定報酬:1配信あたり数万円〜数百万円
  • 売上歩合:売上の5〜20%程度
  • 商品提供:サンプル品や割引購入権
  • 独占販売権:一定期間の独占販売で差別化

トップKOLの収益例

中国のトップKOL「李佳琦(Austin)」や「薇婭(Viya)」は、1回の配信で数十億円の売上を記録することも。KOLへの報酬だけで数億円になるケースもあります。

李佳琦は「口紅王子」として知られ、コスメのライブコマースで有名。2021年の独身の日(11月11日)セールでは、12時間で約180億元(約3,600億円)の売上を達成しました。

薇婭は食品から家電まで幅広いジャンルを扱うトップKOL。2021年に税金問題で活動停止となりましたが、その全盛期には年間数百億円の売上を記録していました。

中小KOLの戦略

トップKOLになれなくても、ライブコマースで稼ぐことは可能です。

中小KOLの成功パターン

特定ジャンルに特化した「KOC(Key Opinion Consumer)」として、少数の熱心なファンに向けた配信が効果的。コスメ専門、ガジェット専門、子育てグッズ専門など、ニッチを攻めることで差別化できます。

注意:日本と中国の違い

中国のトップKOLの報酬体系は日本とは桁違いです。日本でライブコマースを始める場合、まずは小規模から始めて実績を積むことが重要です。


日本のライブコマース現状と成功事例

日本市場の特徴

日本のライブコマース市場は中国の1/100以下の規模ですが、今後の成長が期待されています。業界では2025年を「ライブコマース元年」と位置付ける声もあります。

日本でライブコマースがこれまで盛り上がらなかった理由としては、以下が挙げられます:

  • 決済インフラ:QRコード決済の普及が遅れ、購入のハードルが高かった
  • 文化的要因:「押し売り感」への抵抗感が強い
  • プラットフォーム:ライブコマースに特化したプラットフォームがなかった
  • 配信者の不足:「売る」スキルを持った配信者が少なかった

しかし、コロナ禍を経てEC利用が一般化し、PayPayなどのQRコード決済も普及。環境が整いつつあります。

日本市場の特徴

  • 専門性・親近感が重視される
  • 自社アプリやSNSでの差別化
  • クロスチャネル戦略(SNS連携)
  • 信頼性・口コミの重要性が高い
  • 「本当に良いもの」を丁寧に紹介するスタイルが好まれる

成功事例

ニトリホールディングス

指標2023年度実績
ライブコマース実施回数86回
累計視聴者数260万人
EC売上高911億円(前年比+28.3%)

2024年度も継続してライブコマースを強化し、視聴者数349万人を達成。

ニトリの成功要因は、社員が自ら出演して商品を紹介する「内製化」にあります。タレントを起用するのではなく、商品知識が豊富な社員が「この商品のここが良い」と実演することで、信頼性の高い配信を実現しています。

Trip.com(日本市場向け)

2020年7月のライブ配信で、一晩で約7,360万円の売上を達成。高級ホテル・旅館の宿泊プランを最大82%割引で販売し、多くの視聴者を集めました。

成功のポイントは「限定感」と「大幅割引」の組み合わせ。ライブ配信でしか手に入らない特別価格を用意し、「今見ている人だけ」の特権を演出しました。

ZOZOTOWN

有名デザイナーやモデルが出演し、ファッションアイテムをリアルタイムで紹介。商品の着用感やコーディネート提案が好評。

「このトップスとこのボトムスを合わせるとこうなる」というコーディネート提案が視聴者に刺さり、セット購入率が通常のECより高いという結果が出ています。

資生堂

美容部員がライブ配信でメイクアップのテクニックを紹介。実際に商品を使いながら「このファンデーションはこう塗るときれいに仕上がる」と実演することで、通常のEC購入より返品率が低下したとのこと。


配信者がライブコマースで稼ぐ方法

方法1:企業案件としてライブコマースに出演

Step 1: 実績を作る

まずは自分のチャンネルで商品紹介配信を行い、「この人の紹介なら買いたい」と思ってもらえる実績を作りましょう。

Step 2: 企業にアプローチ

MCN(マルチチャンネルネットワーク)に所属するか、直接企業に営業します。ライブコマース専門のマッチングサービスも増えています。

Step 3: 報酬形態を選択

固定報酬型、成果報酬型、またはそのハイブリッドがあります。実績が少ないうちは成果報酬で実績を積むのがおすすめ。

方法2:自分の商品・アフィリエイトで販売

配信者自身が販売する方法

  • オリジナルグッズ:Tシャツ、アクリルスタンド、ステッカーなど
  • アフィリエイト商品:Amazon、楽天の商品を紹介
  • デジタルコンテンツ:教材、テンプレート、音源など
  • サービス提供:コンサル、レッスン、コミュニティ

方法3:クロスボーダーEC(越境EC)

日本の商品を中国市場に向けて販売する「越境ライブコマース」も注目されています。

日本商品が中国で人気の理由

中国では日本製品への信頼が高く、特にコスメ、ベビー用品、サプリメント、日用品が人気。「Made in Japan」というだけで付加価値がつくため、日本の配信者が日本から配信しても需要があります。

越境ECに取り組むには、中国語のスキルや中国のプラットフォームへの参入が必要ですが、代行業者を使うことで日本にいながら中国市場にアクセスすることも可能です。


日本でライブコマースに使えるプラットフォーム

プラットフォーム特徴向いている商品
Instagramライブ若年女性に強い、コスメ・アパレル向きアパレル、コスメ、雑貨
YouTube Live長時間配信可能、アーカイブ残る家電、ガジェット、解説系
TikTok LIVE拡散力が高い、短時間で盛り上げ若年層向け、トレンド商品
楽天ROOM楽天市場と連携、購入導線が明確楽天市場の商品全般
BASE ライブ自社ECと連携しやすいオリジナル商品、ハンドメイド
17LIVE投げ銭文化が根付いているエンタメ系、ファンビジネス

プラットフォーム選びのポイント

どのプラットフォームを選ぶかは、自分の得意ジャンルターゲット層で決めましょう。

プラットフォーム選択の基準

  • 既存フォロワーがいる場所:ゼロから始めるより、すでにファンがいるプラットフォームを選ぶ
  • 商品との相性:ビジュアル重視ならInstagram、詳細説明ならYouTube
  • 購入導線:楽天ROOMのように購入まで完結するものが理想
  • 配信のしやすさ:機材や設定のハードルも考慮

ライブコマース成功の5つのポイント

1. 商品を「体験」として見せる

ただ商品を紹介するのではなく、実際に使っている様子、使用後の変化、サイズ感や質感をリアルタイムで伝えましょう。

2. 限定感・緊急性を演出

「配信限定割引」「残り10個」「今日だけ特典付き」など、今買う理由を作ることが重要です。

3. 視聴者とのコミュニケーション

コメントを読み上げ、質問にその場で回答。「〇〇さんありがとう!」と名前を呼ぶだけでも購買意欲が上がります。

4. 信頼性の構築

嘘をつかない、デメリットも正直に伝える、使ったことのない商品は売らない。長期的な信頼が収益につながります。

5. 定期的な配信スケジュール

「毎週金曜20時はお買い物配信」など、視聴者が習慣化できるスケジュールを設定しましょう。


2025年以降のトレンド

注目のトレンド

  • AI活用:台本自動生成、デジタルヒューマンKOL
  • ショート動画連携:TikTok/Reels→ライブ配信への誘導
  • クロスボーダーEC:日本商品を中国市場に販売
  • コミュニティコマース:ファンコミュニティ内での販売

AIとライブコマースの融合

中国ではAIが自動で商品紹介を行う「バーチャルKOL」が登場しています。24時間稼働可能で、人件費もかからないため、企業にとっては魅力的な選択肢です。

また、AIによるリアルタイム翻訳機能を使えば、日本の配信者が中国語字幕付きで配信することも可能に。言語の壁を超えたライブコマースが現実のものになりつつあります。

ショート動画→ライブの導線

TikTokやInstagram Reelsでバズった商品を、そのままライブ配信で紹介するという流れが定着しつつあります。

  1. ショート動画で商品の魅力を15〜30秒で伝える
  2. 「詳しくはライブで!」と告知
  3. ライブ配信で詳細説明&限定価格で販売

この導線を作ることで、認知→興味→購買のファネルを効率的に回すことができます。

メタバースとライブコマース

将来的には、VR/ARを活用した没入型ライブコマースも期待されています。バーチャル空間で商品を「手に取る」ように見られるようになれば、アパレルや家具などサイズ感が重要な商品の購入体験が大きく変わるでしょう。


まとめ

ライブコマース参入のポイント

  • 市場は成長期:日本は今がチャンス、先行者利益あり
  • まずは小さく始める:自分の得意ジャンルでテスト配信
  • 中国の事例を参考に:成功パターンを日本向けにアレンジ
  • 信頼性が最重要:短期の売上より長期のファン獲得
  • プラットフォーム選び:自分の視聴者層に合った場所で

中国のライブコマースは「10年先を行く」と言われています。その知見を活かしつつ、日本市場に合った形でライブコマースに挑戦してみてください。配信者の新しい収益源として、大きな可能性を秘めています。

今日から始めるアクションプラン

ライブコマースに興味を持った方は、まず以下のステップから始めてみましょう。

  1. リサーチ:中国の人気KOLの配信を視聴して、どんな工夫をしているか観察する
  2. ジャンル選定:自分が詳しい、または興味のある商品ジャンルを決める
  3. プラットフォーム選択:自分のフォロワーがいる場所、または新規開拓したい場所を選ぶ
  4. テスト配信:まずは1〜2商品から始めて、視聴者の反応を見る
  5. 改善:配信のアーカイブを見返して、改善点を洗い出す
  6. 継続:週1回など、継続可能なペースで配信を続ける

ライブコマースは「すぐに結果が出る」ものではありません。しかし、継続することで配信スキルが上がり、視聴者との信頼関係が築けます。その信頼こそが、長期的な収益につながる最大の資産です。

日本のライブコマース市場はまだ黎明期。今から始めれば、先行者として有利なポジションを取れる可能性があります。ぜひこの記事を参考に、新しい収益の柱としてライブコマースにチャレンジしてみてください!


参考リンク

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よくある質問

Q中国のライブコマース市場規模はどのくらい?
A
2023年時点で約98兆円(4兆9,168億人民元)に達しており、2025年には100兆円を超えると予測されています。日本の小売市場全体(約150兆円)に匹敵する規模です。
Q日本でライブコマースは成功している?
A
ニトリは2023年度に86回のライブコマースを実施し、視聴者数累計260万人を突破。EC売上911億円の一部に貢献しています。2025年は『ライブコマース元年』になると言われています。
Q配信者がライブコマースで稼ぐには?
A
インフルエンサーとして企業のライブコマースに出演する方法と、自分の商品やアフィリエイト商品を自ら販売する方法があります。中国では売上の数%〜20%程度がKOL(インフルエンサー)の報酬となります。
Qどのプラットフォームでライブコマースができる?
A
日本ではInstagramライブ、YouTube、楽天ROOM、SHOPROOM、BASEライブなどが利用可能です。中国では淘宝直播、抖音(TikTok)、快手が主流です。
Qライブコマースに向いている商品ジャンルは?
A
アパレル、コスメ、食品、家電が人気です。特に『実際に使う様子を見せられる商品』『限定感を出せる商品』『インフルエンサーのおすすめで売れる商品』が向いています。

この記事を書いた人

TK

モリミー

Webエンジニア / テクニカルライター / マーケター

都内で働くWebエンジニア。テクニカルライターをしています。 映画やゲームが好きです。

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