APS-Cサイズとは?センサーサイズの違いと特徴を初心者向けに解説

APS-Cサイズとは?センサーサイズの違いと特徴を初心者向けに解説

デジタルカメラを選ぶ際によく目にする「APS-C」という言葉。これはイメージセンサーのサイズを表す規格の一つです。今回は、APS-Cセンサーの特徴やメリット・デメリットについて、初心者の方にもわかりやすく解説します。

APS-Cサイズとは?基本を理解しよう

APS-Cは「Advanced Photo System type-C」の略で、デジタルカメラのイメージセンサーサイズの規格です。フィルム時代のAPSフィルムのクラシックサイズ(25.1×16.7mm)に由来しています。

APS-Cセンサーのサイズ

  • 一般的なAPS-C:約23.6×15.6mm(ニコン、ソニー、富士フイルムなど)
  • キヤノンAPS-C:約22.2×14.8mm(少し小さい)
  • フルサイズ比:面積は約40%程度

なぜセンサーサイズが重要なのか?

イメージセンサーは、レンズから入ってきた光を電気信号に変換する「カメラの心臓部」です。センサーサイズは以下の要素に大きく影響します:

  1. 画角(写る範囲)
  2. ボケの大きさ
  3. 高感度性能
  4. ダイナミックレンジ
  5. カメラとレンズのサイズ・重量

主要なセンサーサイズの比較

カメラには様々なセンサーサイズがあります。APS-Cの位置づけを理解するため、主要なサイズを比較してみましょう。

センサーサイズ サイズ(mm) 面積比(対フルサイズ) 主な採用カメラ
中判 43.8×32.9 約1.7倍 GFX、X1D
フルサイズ 36×24 1.0倍 α7、EOS R、Z9
APS-C 23.6×15.6 約0.4倍 X-T5、α6700、EOS R7
マイクロフォーサーズ 17.3×13 約0.25倍 OM-1、GH6
1インチ 13.2×8.8 約0.13倍 RX100、G7X
1/2.3インチ 6.2×4.6 約0.03倍 コンデジ、スマホ

クロップファクター(焦点距離換算)の理解

APS-Cセンサーの重要な特徴の一つが「クロップファクター」です。

クロップファクターの値

ニコン・ソニー・富士フイルム 1.5倍
キヤノン 1.6倍
マイクロフォーサーズ 2.0倍

実際の画角の変化

同じレンズを使っても、センサーサイズによって画角(写る範囲)が変わります:

  • 50mmレンズの場合
    • フルサイズ:50mm相当
    • APS-C(×1.5):75mm相当
    • APS-C(キヤノン×1.6):80mm相当

これは望遠側では有利に、広角側では不利になることを意味します。

APS-Cセンサーのメリット

1. 望遠効果が得られる

望遠撮影での利点

  • 300mmレンズが450mm相当(×1.5)として使える
  • 野鳥撮影やスポーツ撮影で有利
  • 望遠レンズを買うよりコストパフォーマンスが良い
  • より遠くの被写体を大きく写せる

2. カメラとレンズが小型・軽量

フルサイズと比較して、システム全体を小型・軽量にできます:

  • ボディサイズ:約20-30%軽量
  • レンズサイズ:イメージサークルが小さいため小型化可能
  • 携帯性:旅行や登山などで重宝
  • 取り回し:長時間の撮影でも疲れにくい

3. 価格が手頃

コスト面のメリット

  • ボディ価格:フルサイズの50-70%程度
  • レンズ価格:APS-C専用レンズは比較的安価
  • 初期投資:システム全体で見ると大幅に安い
  • メンテナンス:センサークリーニングも安価

4. 被写界深度が深い

同じF値でも被写界深度(ピントの合う範囲)が深くなります:

  • 風景撮影で全体にピントを合わせやすい
  • スナップ撮影でピント外れが少ない
  • 初心者にも扱いやすい

APS-Cセンサーのデメリット

1. 高感度性能の制限

高感度での課題

  • ISO3200以上でノイズが目立ちやすい
  • 暗所撮影での制約
  • フルサイズと比べて約1段分の差
  • 夜景撮影やライブ撮影で不利

2. ボケ量が少ない

同じF値、同じ構図で撮影した場合:

  • ボケ量はフルサイズの約2/3
  • ポートレートで背景をぼかしにくい
  • より明るいレンズが必要になることも

3. 広角撮影の制限

クロップファクターの影響で広角側が不利:

  • 14mmレンズでも21mm相当(×1.5)
  • 室内撮影で画角が狭い
  • 風景撮影で広がりを表現しにくい
  • 超広角レンズの選択肢が限られる

4. ダイナミックレンジの差

明暗差の大きいシーンでの表現力:

  • ハイライトが飛びやすい
  • シャドウ部のノイズが多い
  • HDR処理が必要な場面が増える

APS-Cが向いている撮影ジャンル

野鳥・野生動物撮影

望遠効果を最大限に活かせる分野です:

  • 被写体までの距離が遠い
  • より大きく写したい
  • 機材の軽量化も重要

スポーツ撮影

スポーツ撮影での優位性

  • クロップファクターで望遠効果
  • 高速連写機能を搭載した機種が多い
  • 被写界深度が深くピント合わせしやすい
  • プロスポーツカメラマンも使用

旅行・登山撮影

携帯性が重要な場面で真価を発揮:

  • システム全体の軽量化
  • 長時間の持ち歩きでも疲れない
  • 十分な画質を確保

日常スナップ

気軽に持ち歩ける点が魅力:

  • コンパクトなシステム
  • 被写界深度が深くピント外れが少ない
  • 街中でも目立ちにくい

代表的なAPS-Cカメラ

キヤノン

  • EOS R7:ミラーレス最上位機
  • EOS R10:エントリーミラーレス
  • EOS Kiss X90:入門一眼レフ
  • EOS 90D:ハイアマチュア一眼レフ

ニコン

  • Z fc:クラシックデザインミラーレス
  • Z 30:Vlog向けミラーレス
  • D500:プロ仕様一眼レフ
  • D7500:中級一眼レフ

ソニー

  • α6700:最新フラッグシップ
  • α6600:手ぶれ補正搭載
  • α6400:ミドルクラス
  • ZV-E10:Vlog特化型

富士フイルム

  • X-T5:4020万画素高画質機
  • X-S20:手ぶれ補正搭載
  • X-T30 II:コンパクトモデル
  • X-E4:レンジファインダースタイル

APS-C vs フルサイズ:どちらを選ぶべきか

よくある誤解

誤解
プロはフルサイズしか使わない
正解
用途に応じてAPS-Cも積極的に使用
誤解
APS-Cは画質が悪い
正解
通常使用では十分高画質、A3印刷も問題なし

APS-Cを選ぶべき人

  • カメラ初心者
  • 望遠撮影が多い人
  • 機材の軽量化を重視する人
  • 予算を抑えたい人
  • 旅行や登山が趣味の人

フルサイズを選ぶべき人

  • ボケを重視する人
  • 高感度撮影が多い人
  • 広角撮影が多い人
  • プロとして仕事で使う人
  • 予算に余裕がある人

レンズ選びの注意点

APS-C専用レンズとフルサイズ対応レンズ

レンズの互換性

APS-C専用レンズ

  • キヤノン:EF-S、RF-S
  • ニコン:DX
  • ソニー:E(APS-C用)
  • 富士フイルム:XF、XC

注意点

  • APS-C専用レンズはフルサイズで使えない(または制限あり)
  • フルサイズ対応レンズはAPS-Cで使える
  • 将来のステップアップを考慮した選択が重要

おすすめの焦点距離

APS-Cでの実用的な焦点距離(35mm換算):

  • 広角:10-18mm(15-27mm相当)
  • 標準:18-55mm(27-82mm相当)
  • 望遠:55-200mm(82-300mm相当)
  • 単焦点:23mm、35mm、56mm

技術の進化とAPS-Cの将来

最新技術の恩恵

近年のAPS-Cセンサーは大幅に進化しています:

  1. 高画素化

    • 4000万画素超のモデルも登場
    • フルサイズに迫る解像度
  2. 高感度性能の向上

    • 裏面照射型センサーの採用
    • ノイズリダクション技術の進化
  3. 高速化

    • 積層型センサーによる高速読み出し
    • 30fps以上の連写が可能
  4. AI技術の活用

    • 被写体認識AFの高精度化
    • 手ぶれ補正の強化

まとめ:APS-Cは優れた選択肢

APS-Cセンサーのポイントまとめ

APS-Cの特徴
バランスの取れたセンサーサイズ
  • フルサイズの約40%の面積
  • クロップファクター1.5倍(キヤノン1.6倍)
  • 小型軽量システムを実現
向いている用途
特定分野で真価を発揮
  • 望遠撮影(野鳥、スポーツ)
  • 旅行、登山などアクティブな撮影
  • 日常スナップや記録用途

APS-Cセンサーは、画質と携帯性のバランスが取れた優れた選択肢です。特に初心者の方にとっては、手頃な価格で本格的な写真撮影を楽しめる最適なフォーマットといえるでしょう。

フルサイズと比較されることが多いですが、それぞれに長所があり、用途に応じて使い分けることが大切です。技術の進化により、APS-Cでも十分に高画質な写真が撮れる時代になっています。自分の撮影スタイルと予算に合わせて、最適なカメラを選びましょう。

よくある質問

QAPS-Cとフルサイズの最大の違いは何ですか?
A
センサーサイズの違いです。フルサイズは約36×24mmですが、APS-Cは約23.6×15.6mm(キヤノンは22.2×14.8mm)と小さくなります。これにより画角、ボケ量、高感度性能などに違いが生じます。
QAPS-Cカメラはプロには向かないのですか?
A
そんなことはありません。多くのプロフォトグラファーがAPS-Cカメラを使用しています。特に望遠撮影が必要な野鳥やスポーツ撮影、機動性を重視する場面では、APS-Cの利点を活かして使われています。
QAPS-C用レンズをフルサイズカメラで使えますか?
A
メーカーによって異なります。キヤノンのEF-Sレンズは物理的に装着できませんが、ニコンのDXレンズは装着可能です(ただしクロップモードになります)。ソニーのEマウントも同様に装着可能です。
Qクロップファクター1.5倍とは何を意味しますか?
A
PS-Cセンサーの画角がフルサイズの1.5倍(キヤノンは1.6倍)の焦点距離相当になることを意味します。例えば、50mmレンズをAPS-Cで使うと、75mm相当(キヤノンは80mm相当)の画角になります。

この記事を書いた人

TK

モリミー

Webエンジニア / テクニカルライター / マーケター

都内で働くWebエンジニア。テクニカルライターをしています。 映画やゲームが好きです。

こちらの記事もおすすめ

広告

記事内広告